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第14話 Growth

PMの言語

アラタ アラタ

1ヶ月前の僕は、こう書いていた。

「いい感じのダッシュボードを作って」

今の僕は、こう書く。

「四半期ごとの採用数を棒グラフで表示するダッシュボード。横軸は月、縦軸は人数。フィルターは部署・職種・雇用形態の3つ。データソースはSupabaseのcandidatesテーブルからstatus=‘hired’のレコードを集計。レスポンシブ対応、モバイルでは棒グラフを横スクロールに。」

この差が、すべてだ。


変化は段階的に起きた。

最初の頃、僕のプロンプトはひどいものだった。「かっこいいページを作って」「もうちょっと良くして」「なんか違う」。クロは根気強く聞き返してくれた。

🤖 クロ
「良くする」とは、具体的にどの部分をどのように変更したいですか?レイアウト、色、フォントサイズ、コンテンツの構成、いずれでしょうか?
🧑‍💼 アラタ
えーと…全体的に?
🤖 クロ
まず、現在のレポート機能の要件を教えてください。誰が、いつ、何の目的で使うものですか?

「誰が、いつ、何の目的で」。

この3つの問いを、クロは何十回と僕に投げかけた。そのたびに僕は考えることを強制された。ぼんやりとした「こうしたい」を、具体的な仕様に変換する作業。それがどれだけ難しいか、人事時代には知らなかった。


プロンプト履歴 L4120 2026-02-08 21:30

[v1] “レポート画面を作って” [v2] “採用レポートを作って。グラフがほしい” [v3] “採用数の月次推移を折れ線グラフで。部署フィルター付き” [v4] “candidatesテーブルからhired_atの月別集計。部署・職種でフィルタ可能。Rechartsで折れ線+棒の複合グラフ。ツールチップに詳細数値表示”

v1からv4への進化。これが1ヶ月で起きた。

人事部長として経営会議に出ていたとき、「で、何がどうなったの?」と社長に聞き返されるのが怖かった。曖昧な報告をすると、すかさず突っ込まれる。数字は?根拠は?期限は?

クロとの対話は、あの経営会議と似ていた。曖昧なことを言うと、必ず具体化を求められる。でもクロには怒りがない。ただ淡々と、「もう少し具体的に」と聞いてくる。


ある日、ハッチに自分のプロンプトを見せた。

👨‍💻 ハッチ
お前、これ完全に要件定義書だな。
🧑‍💼 アラタ
要件定義書?
👨‍💻 ハッチ
PMが書くやつ。ユーザーストーリー、受け入れ条件、技術仕様。全部入ってる。お前、PMの研修とか受けた?
🧑‍💼 アラタ
受けてない。クロに毎回聞き返されるうちに、こう書かないと伝わらないって学んだだけ。

ハッチは少し考えて、こう言った。

👨‍💻 ハッチ
それ、新人エンジニアに一番足りないスキルだよ。コードは書けても、何を作るべきかを定義できない。お前は逆方向から来てるわけだ。

逆方向。コードから入るんじゃなく、要件から入る。


PMの言語を学んでから、プロダクトの質が明らかに変わった。手戻りが激減した。

以前は「作って → 違う → 直して → まだ違う → もう一回」のループが延々と続いていた。今は最初のプロンプトで8割正しいものが出てくる。残り2割の調整も、「ここのパディングを16pxから24pxに」のような具体的な指示で済む。

要件定義テンプレート L5580 2026-03-05 19:45

Feature: [機能名]

User Story

  • As a [ユーザー種別], I want to [行動] so that [目的]

Acceptance Criteria

  • 条件1
  • 条件2

Technical Notes

  • データソース:
  • UI ライブラリ:
  • パフォーマンス要件:

自分用のテンプレートまで作った。人事時代に使っていた評価シートのテンプレートと、やっていることは同じだ。フォーマットがあれば、漏れがなくなる。

🤖 クロ
要件が明確なほど、実装の精度が上がります。今回のプロンプトは非常に具体的で、1回のイテレーションでほぼ完成形に到達できます。

クロにそう言われて、少し誇らしかった。

AIに褒められて嬉しいのか? そうだ。嬉しい。だって2ヶ月前は「もう少し具体的に」と毎回言われていたのだから。


PMの言語を身につけたことで、もう1つ変わったことがある。

エンジニアと話せるようになった。

人事時代、開発部門のエンジニアたちとの会話にはいつも壁があった。「技術的なことはよくわからないので」と前置きして、曖昧な要望を伝える。エンジニアは困惑した顔をして「具体的にどういうことですか?」と聞き返す。お互いにフラストレーションが溜まる。

今は違う。APIのエンドポイント。データベースのスキーマ。認証フロー。これらの言葉を使って会話できる。全部を理解しているわけじゃない。でも「何を聞けばいいか」がわかる。

それだけで、世界が全然違う。

PM · 要件定義 · コミュニケーション

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