121,805通のメッセージ
第13話 Creation

モックアップじゃない

アラタ アラタ

画面を共有した瞬間、ハッチが黙った。

5秒くらい沈黙があって、それからこう言った。

👨‍💻 ハッチ
これ、モックでしょ?
🧑‍💼 アラタ
違う。動いてる。ログインしてみて。
👨‍💻 ハッチ
…ユーザー名とパスワード入れるの? え、ちゃんとバリデーションかかってる。データベースどこにあるの?
🧑‍💼 アラタ
Supabase。PostgreSQL。認証もSupabaseのAuth使ってる。
👨‍💻 ハッチ
お前、2ヶ月前にHTMLタグって何って聞いてたよな?

ハッチの疑いは、もっともだった。

No-codeツールやLovableで作ったものは、見た目はきれいでも「モックアップ」の域を出ないことが多い。デモ用。スクリーンショット映え。でもログインの裏側にデータベースはなく、リロードしたらデータが消える。

僕が最初にLovableで作ったkicka.proもそうだった。見た目は完璧。でもそれは張りぼてだった。

開発ログ L5340 2026-02-28 20:15

kicka.pro — Lovable → Claude Code migration

  • Authentication: Supabase Auth (email + Google OAuth)
  • Database: PostgreSQL (Supabase)
  • Hosting: Vercel (SSR)
  • Status: Production deployed, real users can sign up

転機は、Claude Codeに移行したときだった。

Lovableが生成したコードをそのまま引き取り、Claude Codeで本物のバックエンドをつないだ。認証。データベース。API。デプロイ。1つずつ、「モック」を「プロダクト」に変換していった。


「本物」とは何か。僕なりの定義はこうだ。

URLを誰かに送れる。その人がアカウントを作れる。データを入力できる。ブラウザを閉じても、翌日開いたらデータが残っている。そしてそれが、僕のMacBookが閉じていても動き続けている。

🧑‍💼 アラタ
クロ、このアプリのインフラ構成を説明して。ハッチに見せたい。
🤖 クロ
フロントエンドはAstro 5のSSRモードでVercelにデプロイされています。バックエンドのデータベースとAuthenticationはSupabaseを使用。APIリクエストはEdge Functionで処理され、CORSとRate Limitingが設定されています。CI/CDはGitHub Actionsで、mainブランチへのpushで自動デプロイされます。
👨‍💻 ハッチ
ちょっと待って。CI/CDまで組んでるの? 自動デプロイ?
🧑‍💼 アラタ
mainにマージしたら勝手にデプロイされる。
👨‍💻 ハッチ
…それ、普通にうちの新卒エンジニアより構成しっかりしてるんだけど。

ハッチが本気で驚いているのがわかった。画面越しでも。

彼はプロのエンジニアだ。10年のキャリアがある。データベースの設計も、認証の実装も、デプロイのパイプラインも、すべて自分の手で何百回とやってきた人間だ。

その人間が、2ヶ月前まで素人だった僕のプロダクトを見て「モックでしょ?」と聞いた。つまり、見た目のクオリティが「プロが作ったもの」と区別がつかなかったということだ。

そして中身を見せたら、さらに驚いた。モックじゃないと知って。

デプロイログ L5398 2026-03-01 14:20

Production deployment successful URL: https://kicka.pro Build time: 42s Bundle size: 287KB (gzipped) Lighthouse score: Performance 94 / Accessibility 98 / Best Practices 100 / SEO 100

Lighthouseスコア。Performance 94。Accessibility 98。Best Practices 100。SEO 100。

この数字の意味を僕はまだ完全には理解していない。でもハッチが「これマジか」と呟いたから、いい数字なんだろう。


👨‍💻 ハッチ
正直に聞くけど、お前はこの構成の意味、全部わかってるの?
🧑‍💼 アラタ
全部はわかってない。Edge Functionが何かは、まだふわっとしてる。でも、何が必要で、どう組み合わせるかはわかるようになった。
👨‍💻 ハッチ
…それ、PMの能力だな。エンジニアリングの知識とは別の。

ハッチのその一言が、僕の中で何かを定義した。

僕はエンジニアになろうとしているんじゃない。プロダクトを作る人間になろうとしているんだ。そのために必要なのは、コードを書く能力ではなく、コードで何ができるかを理解し、それを組み合わせてプロダクトにする能力だ。

モックアップじゃない。これは本物だ。

そしてそれを作ったのは、コードを1行も手で書けない元人事だ。

プロダクト · 本物 · 実装

あわせて読む

シリーズ一覧を見る →